はじめに
「配信のスパチャや企業案件、これって申告しなきゃダメなの?」
「確定申告って、なんだか難しそう……」
そんな不安を抱えている配信者さん、意外と多いのではないでしょうか。副業として活動していても、収入がある以上「確定申告」は避けて通れないポイントです。
この記事では、
- 経費にできるもの/できないもの
- 投げ銭や企業案件の売上の記録方法
- 税理士に頼むか、自分でやるかの判断基準
など、初めての確定申告で押さえておくべき基本ポイントをわかりやすく解説します。
確定申告ってそもそも何?
対象者とタイミング
確定申告とは、1年間(1月1日〜12月31日)の「所得(売上から経費を引いた利益)」を税務署に報告し、必要に応じて税金を納める手続きのことです。
原則として、年間の所得が20万円を超える副業をしている人や、本業としてフリーランスで活動している人は申告が必要になります。
申告時期は毎年【2月16日〜3月15日】。この期間に書類を提出しなければならないため、早めの準備が肝心です。
配信者も「事業所得」や「雑所得」の対象になる
YouTube、Twitch、SHOWROOM、Xスペースなど、配信活動で得た収益は課税対象です。内容によっては以下のように扱われます。
- 企業案件やグッズ販売 → 事業所得
- スーパーチャット・投げ銭 → 雑所得 or 事業所得(継続性があれば)
税務署や税理士と相談しながら判断する必要がありますが、「申告しなくてもバレないから大丈夫」というのは通用しません。プラットフォームの支払い記録などから調査される可能性もあるため、申告は必ず行いましょう。
経費になるもの/ならないもの
確定申告では、「収入 − 経費 = 所得(課税対象)」となるため、どこまで経費にできるかは非常に重要です。とはいえ、なんでもかんでも経費にできるわけではありません。税務署から否認されるとペナルティもあるため、基準を押さえておきましょう。
経費になるもの(例)
配信活動に直接必要な支出は、原則として経費に計上できます。
費目例 | 内容 |
---|---|
配信機材 | PC、マイク、オーディオインターフェース、照明 など |
ソフトウェア | 動画編集ソフト、配信ツール、イラストソフトなど |
通信費 | Wi-Fiやネット回線など(按分が必要なことも) |
外注費 | サムネ制作や動画編集の外注報酬 |
消耗品費 | 文房具、小道具、背景セットなど |
旅費交通費 | イベントや案件のための移動費(私用と区別) |
宣伝広告費 | SNS広告、Xプレミアム料金、販促にかけた費用 |
経費にならないもの(例)
一方で、私的な支出や、配信活動と無関係な費用は経費になりません。
費目例 | 内容 |
---|---|
私的な食費 | 仕事の打ち合わせを除く、日常の食事代 |
生活家賃 | 自宅兼スタジオでも、全額は対象外(按分が必要) |
趣味の支出 | 収益化していない趣味用ゲームやグッズ類など |
美容費用 | エステや化粧品などは原則NG(キャラ設定上必要な場合は要相談) |
グレーな場合は「按分(あんぶん)」で処理する
配信にも私生活にも使うもの(スマホ代、家賃、電気代など)は、事業で使っている割合分だけ経費にできるというルールがあります。これを「按分」と呼び、具体的な使用割合に基づいて按分計算をします。
例えば、家賃が10万円で、そのうち1部屋(全体の1/3)を作業スペースとして使っている場合、約3万円を経費にする、といった具合です。
売上の記録方法
確定申告では、どんな形であっても収入があれば「売上」として申告が必要です。とくに配信者の場合、収入の入り口が複数あるため、整理して記録しておくことが重要です。
① 投げ銭(スーパーチャット・ギフティングなど)
YouTubeやTwitch、REALITY、SHOWROOMなどから得られる投げ銭収入は、プラットフォームを介して支払われるため「収益化した活動による売上」に該当します。
- 手数料差し引き後の金額が振り込まれますが、本来の売上は「振込額+手数料」で計上するのが原則です。
- プラットフォームから発行される支払明細や収益レポートを必ず保存しましょう。
② 企業案件(タイアップ・広告出演・プロモ投稿など)
企業からの案件報酬も、当然ながら事業収入として計上が必要です。
- 振込の有無にかかわらず、請求書を発行した時点(または入金時点)で売上として記録する必要があります。
- 「報酬3万円未満で源泉徴収あり」といったケースもあるため、受領金額と請求金額の差額には注意。
- 契約書やメールのやりとりなど、報酬額の根拠になる資料を保管しておきましょう。
③ アフィリエイト・グッズ販売・その他
- アフィリエイト報酬も確定した時点で売上計上が必要です。
- BOOTHやBASEなどでのグッズ販売も、売上・手数料・振込額をそれぞれ記録しておきましょう。
売上記録のコツ
- スプレッドシートなどで「日付」「取引先」「金額」「摘要(内容)」を整理
- 各種プラットフォームのダッシュボード画面は定期的にスクショ保存しておくと安心
- クラウド会計ソフト(freee・マネーフォワードなど)を活用すれば仕訳がスムーズ
税理士に依頼するべき?
確定申告は自力でも対応可能ですが、状況によっては税理士への依頼を検討した方がよいケースがあります。ここでは、個人事業主として税理士に相談すべきタイミングや判断基準を紹介します。
① 年間売上が増えてきたとき
- 目安:年間売上が300万円を超えるあたりから
- 売上や経費の件数が多くなってくると、申告ミスや漏れが起きやすくなります。
- 所得税だけでなく、住民税・消費税・個人事業税などの影響も見据える必要が出てきます。
② 経費や控除に自信がないとき
- 「これって経費にして大丈夫?」と不安な項目が増えてくると、調べる時間や心理的負担も増大。
- 税務調査が来た場合のリスク回避としても、プロの判断を仰ぐのが安全です。
③ 副業から本業になったとき
- 開業届や青色申告承認申請書の提出、事業所得・雑所得の判断など、本格的な事業運営に関する知識が求められます。
- 将来的に法人化を視野に入れるなら、早めに税理士と関係を築いておくのがベストです。
④ 確定申告にかける時間がもったいないと感じたとき
- 申告作業に慣れない人が自力で取り組むと、数日〜1週間単位の時間がかかることも。
- 本業である配信活動に集中したい人ほど、アウトソーシングの価値は大きくなります。
税理士に依頼する場合の費用相場
- 確定申告だけ依頼する場合:3〜10万円程度
- 毎月の顧問契約(記帳・相談含む):月額1〜3万円程度
※業務の範囲や事業規模によって異なるため、事前に見積もりを取りましょう。
このように、税理士は「コスト」ではなく「リスク対策と時間節約の投資」とも言えます。少しでも不安がある場合は、気軽に相談してみるのがよいでしょう。
まとめ
配信者や個人事業主としての活動が軌道に乗ってくると、確定申告は避けて通れないステップになります。
- 経費の判断
- 売上の管理
- 申告書の作成
これらをすべて自力で対応するのは可能ですが、時間とリスクを天秤にかけて、無理をしすぎないことも重要です。
「わからないところだけスポットで相談する」「来年からはプロに任せる」など、段階的に外部の力を借りるのも良い選択肢です。
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「まず何からすればいいの?」という段階でも大丈夫です。お気軽にご相談ください。