ライブ配信をしていると、映像がカクつく、音がずれるといったトラブルに直面することがあります。
配信ソフトの不具合やPCの性能不足、ネット回線の問題、さらには設定ミスなど、原因はさまざまです。
こうした不具合は視聴者の体験を大きく損なうだけでなく、配信者自身のモチベーションにも影響します。
しかし、裏を返せば「正しく原因を特定し、対処すれば改善できる」ケースが大半です。
本記事では、
- PCスペックの確認
- OBSなどの配信設定
- ネット回線の状態
- オーディオまわりの見直し
といったよくある原因をチェックリスト形式で整理し、具体的な対処法を提示します。
「何から手をつければいいかわからない」という方は、ぜひ順番に読み進めてみてください。
あなたの配信環境が、もっと快適で安定したものになる手助けができれば幸いです。
PCスペックを見直す
配信トラブルの原因としてまず疑うべきは、PCの処理能力です。
特にゲーム配信を行う場合は、ゲームそのものに加え、OBSなどの配信ソフトが並行して動作するため、CPUやGPUへの負荷が非常に高くなります。
CPUやGPUの性能が不足していないか
OBSやXSplitなどの配信ソフトはCPUへの依存度が高く、とくに映像エンコード時に大きな負荷がかかります。
ゲームと同時に動かす場合、最低でも4コア8スレッド以上のCPUが望ましく、Intel Core i5/i7、AMD Ryzen 5/7クラスが基準です。
GPUも、グラフィックの描画とエンコード処理を分担させる際に重要です。
NVIDIA製GPUには「NVENC」という専用エンコーダーが搭載されており、配信時のCPU負荷を大幅に軽減できます。
メモリは16GB以上あるか
配信においてメモリ不足は非常に深刻な問題です。
ゲーム、配信ソフト、ブラウザ、チャットツールなど複数のアプリを同時に起動すると、8GBではすぐに限界に達してしまいます。
理想は16GB、編集なども行うなら32GBが安心です。
メモリの使用率は、タスクマネージャー(Ctrl + Shift + Esc)で「パフォーマンス」タブから確認できます。常時80%を超えている場合は増設を検討しましょう。
バックグラウンドアプリを閉じる
意外とPCのリソースを圧迫しているのが、常駐・バックグラウンドアプリです。
Chrome、Discord、Steamクライアント、Adobe製ソフトなどは、起動していないように見えて裏で動いていることがあります。
とくに起動時に自動で立ち上がるアプリケーションは要注意です。
「スタートアップ」タブから不要なアプリの自動起動をオフにし、配信時には必要最小限のソフトだけを起動するよう心がけましょう。
配信設定を見直す(OBSなど)
PCスペックが十分でも、配信ソフトの設定が適切でない場合には「カクつき」や「音ズレ」が発生します。とくにOBSなどのソフトでは、ビットレートやエンコーダーの設定がトラブルの要因となりやすいため、以下の項目を確認しましょう。
ビットレートが高すぎないか
配信ビットレートが上り回線の帯域に対して高すぎると、フリーズや音ズレの原因になります。たとえば上り速度が10Mbps程度しかない環境で6,000kbpsなどに設定していると、回線がパンクしがちです。
一般的な目安としては、上り回線速度の80%以下にビットレートを抑えるのが安全です。
例:上り回線 10Mbps → 最大8,000kbps(実際は6,000kbps程度が望ましい)
回線速度はスピードテスト(例:Fast.com、Speedtest.netなど)で簡単に測定できます。
エンコーダーは「x264」か「NVENC」か
OBSでは、エンコード処理(配信映像の圧縮)をCPUベースの「x264」とGPUベースの「NVENC」で選ぶことができます。
- x264:CPUの処理能力に依存。映像は高画質になりやすいが、CPU負荷が高い。
- NVENC:NVIDIA製GPU搭載PCで使用可能。CPU負荷を軽減でき、ゲームとの同時処理に適する。
ゲームのグラフィック負荷が高いタイトルを扱うなら、NVENCを使うことでバランスのよい負荷分散が可能です。
録画と配信の同時実行に注意
配信と同時に録画も行う設定にしている場合、ストレージへの書き込み処理やエンコード処理が重複し、動作が不安定になることがあります。
録画が必須でない場合はオフにするか、配信中のみ録画を自動で行う設定(「配信時のみ録画」)にしておくと、パフォーマンス低下を抑えることができます。録画フォーマットや保存先ドライブ(SSD推奨)にも注意しましょう。
ネットワーク環境を確認する
配信の滑らかさや音声のズレは、PCの性能やソフトの設定だけでなく、ネット回線の品質や安定性にも大きく左右されます。特にライブ配信では、映像と音声データをリアルタイムでアップロードし続けるため、通信の遅延や不安定さが顕著に影響します。
有線接続か、無線か
Wi-Fi(無線LAN)で配信している場合は、それだけで不安定になる要因です。特に集合住宅やマンションなどでは、夜間などの混雑時間帯に通信が不安定になることが多く、カクつきや音ズレの原因となります。
配信する際にはできるだけLANケーブルを用いた有線接続を推奨します。ルーターが遠くて接続が難しい場合でも、中継機やメッシュWi-FiよりPLCアダプターや長めのLANケーブルを検討する方が安定性は高まります。
アップロード速度は十分か
配信において重要なのはアップロード(上り)速度です。スピードテストサイト(例: fast.com)で実測値を確認しましょう。
- 最低限必要な速度:5Mbps以上
- 安定して配信したいなら:10Mbps以上が望ましい
なお、表示される数値がこの基準を満たしていても、実際の回線品質(ジッターやパケットロス)によっては配信に支障が出る場合もあるため、配信中に頻繁にトラブルが起きる場合はプロバイダやルーターの見直しも検討してみてください。
オーディオ設定を確認する
「映像と音声がずれる」「ゲーム音とマイク音が噛み合わない」といったトラブルは、PCや回線ではなく「オーディオ設定」のミスが原因であることも少なくありません。特にOBSなどの配信ソフトを使用している場合、細かな音声の遅延補正設定が必要になることがあります。
音ズレの多くは「同期設定ミス」
デスクトップ音声とマイク音声がズレて聞こえる現象は、OBSの「音声ミキサー>詳細プロパティ」で確認・調整できます。
- 映像と音声のタイミングが合わない場合は「同期オフセット(ミリ秒)」を使って調整
- 複数ソースがある場合は、それぞれの遅延時間を揃えることが重要
OBS以外の配信ソフトでも、同様の設定項目があるため、設定画面での確認を忘れずに。
オーディオデバイスが複数あるとズレやすい
PCに複数のマイクや音声出力デバイス(例:スピーカー・オーディオインターフェース・仮想ミキサー)が接続されていると、どの音声がどこから出力・入力されているかが混乱しやすくなります。
- マイクを2本使っていると、音源が二重に記録されてエコーのようになることも
- ヘッドホンとスピーカー両方が有効だと、音声が分散しズレが起きる原因に
不要なデバイスはWindowsやOBSの設定画面から無効化し、使用する機材をできるだけシンプルに整理することで、安定した配信環境が整います。
その他のよくある原因
配信環境の不調はPCやネット設定以外にも、周辺機器やOSの状態に起因することがあります。とくに以下のポイントは見落とされやすいけれどトラブルの原因になりやすい項目です。
外部キャプチャーボードの遅延
Nintendo SwitchやPS5などの家庭用ゲーム機を配信する場合に使用されるキャプチャーボードは、機種や接続方法によって映像・音声の遅延が発生することがあります。
- USB2.0接続の古い機種は特に遅延が出やすい
- パススルー出力の有無やOBS上の遅延補正設定もチェックが必要
- 安価な製品はフレーム落ちが発生することも
対策としては、USB3.0以上対応/遅延の少ない製品の選定や、OBS側での遅延補正設定の見直しが有効です。
オーディオインターフェースのドライバ未更新
外部マイクやミキサーを使用するために導入されるオーディオインターフェースも、ドライバの更新が必要です。
- 古いドライバはOSや配信ソフトとの相性問題を引き起こす可能性あり
- メーカー公式サイトから最新バージョンを確認・導入するのが基本
更新後は、デバイス設定が初期化されていることもあるため、音声ルーティングやサンプリングレートの確認も行いましょう。
Windowsアップデート直後の動作不安定
Windowsアップデートの直後は、裏で更新作業が走り続けていたり、一部設定が初期化されることで、動作不良や配信トラブルが発生する場合があります。
- アップデート後は再起動を必ず実施
- 動作が不安定な場合は「配信は数日待つ/アップデートを一時停止する」のも手
- 更新により音声デバイスやディスプレイ設定が変わっているケースも
「いつも通りなのに不調」と感じたら、最近のアップデート履歴を確認してみましょう。
まとめ
配信中の「重い」「音ズレ」といったトラブルは、機材の故障よりも設定や環境の見直しで解決できるケースが大半です。
焦らずに、
- PCのスペック・使用状況
- OBSなどの配信設定
- ネット回線の安定性
- オーディオや外部機器の状態
といったチェックポイントを順番に確認し、切り分けていくことが解決の第一歩です。
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- PC環境診断(スペック不足の可能性チェック)
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