業務委託契約とは?

案件・お金の話

配信者として活動していると、企業からの案件や外注とのやりとりの中で「業務委託契約」という言葉に出会う機会が増えてきます。

とはいえ、「なんとなくわかるけど、雇用契約と何が違うの?」「サインしていい契約か自信がない…」と感じたことはありませんか?

実は、業務委託契約は内容次第でこちらが不利になることもあれば、逆に身を守る「保険」になることもある重要な書類です。

この記事では、配信者・クリエイターの方に向けて、業務委託契約の基本的な考え方や注意すべきポイントをわかりやすく解説します。

雇用契約との違いを知ろう

業務委託契約とは、企業や個人が特定の業務や成果の提供を外部に依頼するための契約です。
法律的には「請負契約」または「委任契約」に分類され、雇用契約とは明確に異なります。

雇用契約との主な違い

項目雇用契約業務委託契約
支払い働いた時間に応じて給与成果または業務完了に応じて報酬
指揮命令会社の指示で働く自分の裁量で遂行
勤務形態出勤・勤務時間の制限あり原則自由(在宅・副業もOK)
社会保険会社が負担・加入自分で手続き・負担
契約終了解雇制限あり一定条件で解除可能

たとえば、企業からPR動画の制作を依頼されたとき、その内容や納期に合意したうえで契約書を交わせば、それが「業務委託契約」です。

一方で、配信者が事務所に所属して毎日決まった時間に配信や活動指示を受けている場合、それが「実質的に雇用関係」とみなされるリスクもあります。

なぜこの違いが大切なのか?

この違いを知らずに契約すると、たとえば以下のようなトラブルが起きる可能性があります。

  • 企業側が一方的に契約を打ち切っても、雇用契約と違って法的に守られない
  • 報酬の支払いが遅れても、労基署ではなく民事手続きで対応が必要
  • 健康保険や年金を自分で支払わなければならないのに気づいていなかった

つまり、「自由な契約」だからこそ、内容をしっかり把握しておくことが自衛につながるのです。

配信者が関わる業務委託契約の代表例

業務委託契約は、配信者やクリエイターが活動の幅を広げていく中で、さまざまな場面で登場します。以下は代表的なケースです。

1. 企業からの案件依頼(PR・タイアップ)

企業から商品紹介やイベント参加、動画制作などを依頼された場合、金額・納期・内容・成果物の使用範囲などを明確にするため、業務委託契約を交わすのが一般的です。

特に以下のようなパターンでは契約書が必要です。

  • SNS投稿+YouTube動画の作成
  • オンラインイベントへの出演
  • 長期タイアップや複数回のPR

2. 他の配信者や事業者との外注関係

たとえばサムネイルデザインや動画編集を他のクリエイターに依頼する場合も、業務委託契約の対象になります。
この場合、依頼者側が「発注元」、受託者側が「請負者」となります。

報酬の支払時期、納品形式、修正回数の上限などを事前に取り決めておくと、トラブル防止になります。

3. 事務所や代理店との業務契約

個人で活動している配信者が、業務の一部(案件窓口、マネジメント、炎上対応など)を事務所や業務代行会社に委託する場合にも、業務委託契約が結ばれることがあります。

このとき注意すべきは、契約内容が包括的すぎないかどうか、また権利の帰属や報酬の計算方法が明確かどうかです。

このように、業務委託契約は「発注する側」にも「受ける側」にも関係する重要な仕組みです。

業務委託契約書の基本構成とは?

業務委託契約書には、最低限押さえておきたい基本構成があります。配信者やクリエイターが安心して活動するためには、契約書のどこをどう見ればいいかを知っておくことが重要です。

ここでは、特に注目すべき5つの基本項目について解説します。

報酬

もっとも関心の高い項目です。契約書には、報酬額・支払時期・支払方法・源泉徴収の有無が明記されている必要があります。

例:「甲は乙に対し、本業務の報酬として金○○円(税込)を支払う。」

支払いが「納品後30日以内」などになっているケースが多く、いつ・いくらもらえるのかを事前にチェックしておきましょう。

権利の帰属(著作権など)

成果物に関する著作権や使用権がどちらにあるかを明確にする条項です。

例:「本業務により作成された成果物の著作権は、乙に帰属するものとする。」

自分が作ったもの(動画・イラスト・企画案など)を、相手が無断で二次利用したり、別用途に使ったりしないよう、ここは非常に重要です。

秘密保持

業務中に知り得た情報を、第三者に漏らさないよう義務づける条項です。活動内容・報酬・取引先情報などが守られるため、双方にとって安心材料になります。

例:「乙は、業務遂行上知り得た甲の秘密情報を、第三者に漏洩してはならない。」

SNS時代のいま、契約情報をうっかり発信してしまわないよう注意喚起される場面も増えています。

契約の解除

どのような条件で契約を途中終了できるかを定めた条項です。トラブルや不信感が生じたときのための「出口」として重要です。

例:「甲または乙は、相手方が本契約に違反した場合、催告なく契約を解除できる。」

一方的に切られないよう、「○日前までに書面通知」などの記載があるかを確認しましょう。

禁止事項(競業避止など)

守るべき行動規範を定めた項目です。たとえば「契約期間中に同業他社と業務しない」「成果物を自分の実績として公開しない」など。

例:「乙は、甲の事前承諾なく、同種の業務を第三者から受任してはならない。」

自由な活動を続けたい配信者にとっては、制約が強すぎないかをチェックすることがポイントです。

これら5つの項目は、業務委託契約書の「柱」とも言える部分です。全文を読む時間がないときでも、まずはここに目を通す習慣をつけておきましょう。

配信者にとっての注意ポイント

業務委託契約は、配信活動が広がるにつれて避けては通れないものです。
企業とのタイアップや外部出演など、活動の幅が広がれば広がるほど、契約の影響力も大きくなります。

配信者として注意したいのは、「契約書を交わす=安全」というわけではない、ということです。
むしろ内容をよく読まなければ、意図しない制約やトラブルの火種になることもあります。

たとえば、

  • 他の企業の仕事を断らなければいけない条項が入っていたり
  • 納品物や収録データの権利をすべて譲渡する内容になっていたり
  • 契約解除の条件が一方的だったり

というケースは珍しくありません。

「面倒だから」「信頼しているから」といって、契約内容を確認せずに進めるのは、長期的に見るとリスクになります。

とはいえ、契約書を一人で読んで判断するのは簡単ではありません。
そういうときは、事前にポイントだけでも押さえておくこと。そして、わからないところは誰かに相談する習慣をつけておくことが、自分を守る一歩になります。

業務委託契約でありがちなトラブルと対策

配信者やクリエイターが企業案件や外部仕事を請ける際、業務委託契約は基本的なビジネスの入り口です。
しかし現場では、「契約があるのにトラブルが起きる」「契約がないまま進んでしまう」ということも少なくありません。

ここでは、実際によくあるトラブルと、その対策を整理しておきます。

トラブル①:一方的に契約を終了される

「もう依頼できません」「今回限りで終了で」など、事前の説明もなく突然契約を切られるケースです。
契約書に「◯日前までに通知すれば解除できる」といった条項がある場合、それに従えば「正当」とされてしまうことも。

【対策】
契約内容に「契約期間」「更新条件」「解除の事前通知義務」が明記されているかを必ず確認しましょう。
曖昧なままの契約は、立場の弱い側が不利益を受けやすくなります。

トラブル②:口頭で聞いていた内容と違う扱いになる

「ギャラはこのくらいで」「SNSで宣伝は不要で大丈夫です」など、最初に聞いていた話と実際の内容が異なることもよくあります。
特に報酬や成果物の扱いについては、後から揉める原因になりがちです。

【対策】
口約束はトラブルのもとです。可能な限り、契約書かメール・チャット等の記録に残しておきましょう。
「契約書に書いてない=保証されない」と考えるのが基本です。

トラブル③:契約書がないまま業務をスタートしてしまう

急ぎの案件や、顔なじみの担当者だと「とりあえず始めましょうか」となることも。
しかし、後から条件で揉めたときに「何をもとに話すか」がない状態は非常に危険です。

【対策】
理想は書面で契約書を交わすことですが、最低限PDFなどの書類で内容を確認してから着手するのがベストです。
内容確認が間に合わない場合でも、「報酬・納期・権利の所在」だけは先に明文化しておきましょう。


困ったときは誰に相談すればいい?

契約やお金の話で悩んだとき、「誰に聞けばいいのか分からない」と感じた経験がある方も多いのではないでしょうか。
特に事務所に所属していないフリーの配信者・クリエイターにとって、相談先の確保は大きな安心材料になります。

事務所に属していない場合

まずは、信頼できる知人や過去に案件経験のある配信仲間に軽く相談してみるのも良い方法です。
それでも不安が残るときは、以下のような外部の相談窓口や支援サービスの利用も選択肢に入ります。

  • 各自治体の無料法律相談(市区町村などが定期的に実施)
  • 法テラス(国が設けた法律相談の窓口)
  • フリーランス協会などが提供する契約トラブル相談サービス

こうした窓口では、一定の条件を満たせば無料や低価格で専門家の助言を受けられる場合もあります。

契約書のチェックや事前確認が必要なとき

案件に関する契約書を見て「本当にこの条件で大丈夫かな?」「相場と比べてどうなんだろう?」と迷ったときは、
弁護士や契約に詳しい支援者にチェックしてもらうのが理想です。

弁護士に相談するのはハードルが高いと感じるかもしれませんが、最近ではメールやチャットで気軽にやり取りできるサービスも増えています。
配信者向けに特化した相談窓口はまだ少ないですが、契約の読み方や注意点の解説など、情報を整理するだけでも大きく前進できます。

ぶいすとり~むの「ひとこま依頼箱」でも対応可能です

「契約を結ぶ前にちょっと相談したい」「誰かに第三者の視点で見てもらいたい」
そんなときには、ぶいすとり~むが提供するサポートサービス『ひとこま依頼箱』もご活用ください。

  • 契約書の読み合わせ
  • 条文の内容の簡単な説明
  • リスクの洗い出しや、事務的な不安の整理

など、弁護士ではなく「実務で契約に向き合ってきた支援者」によるアドバイスを提供しています。
(※法的判断を伴う助言は行いません)

「これって断っても大丈夫?」「曖昧な条件だけど進めていいの?」といった悩みに対して、現場目線で一緒に考えるお手伝いをしています。


まとめ

配信活動は「趣味の延長」のように見えることもありますが、企業案件や収益化が関わる以上、立派な「仕事」です。
そのためには、「言った・言わない」で揉めないようにすることや、不利益を避けるための備えが欠かせません。

契約書は、そうしたリスクから自分自身を守るための「保険」のようなもの。
相手を疑うための道具ではなく、お互いの立場や役割を明確にし、安心して活動するための手段です。

特にフリーで活動する配信者にとって、関係性が曖昧なまま始まる仕事ほどトラブルの温床になりがちです。
だからこそ、「なんとなく」で進めずに、最低限の確認と「書面で交わす」習慣を持つことが、自分を守る第一歩になります。

「契約って難しそう」と感じるかもしれませんが、大丈夫。
ひとつずつ経験しながら、必要な知識を手に入れていけば良いのです。

そして、どうしても不安なときは、遠慮なく周囲や支援者を頼ることも、仕事を続ける上でのスキルのひとつだと考えてみてください。

この記事を書いた人
ぶいすと編集長

起業家歴6年
これまでVTuberのマネジメントや、BtoCサービス、CtoCサービスのオペレーション構築、年商100億円以上の大手企業やスタートアップへ業務コンサルティング、金融サービス向けのコンプライアンス体制構築などに携わってきました。
表には見えない課題や実務に触れてきたからこそ、ひとつでも「助かった」と思ってもらえる情報を整理して届けたいと思っています。

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