配信者が知っておきたいPCの基礎知識

機材の話

配信者にとってパソコンは「相棒」であり「商売道具」です。
けれど「とりあえずスペックが高いPCを買えばいい」と思っていませんか?
実は、配信スタイルによって必要な性能はまったく異なります。

この記事では、配信者が最低限知っておきたいPCパーツの基礎をわかりやすく解説します。
アップグレード、初めての導入前にぜひご一読を。

PCの基本構造とは?

パーツはそれぞれ「役割分担」して動いている

パソコンは、複数のパーツがそれぞれの役割を担いながら協力して動いている機械です。
例えるなら「チームワークで動く工場」のようなものです。

  • CPU(中央演算処理装置)は「頭脳」。全体の司令塔として動作をコントロールします。
  • GPU(グラフィックボード)は「映像専門の職人」。映像処理を得意とし、ゲームや配信で負荷がかかる部分を担当します。
  • メモリ(RAM)は「作業机」。広ければ広いほど同時作業に強く、ソフトの動作もスムーズになります。
  • ストレージ(SSD/HDD)は「倉庫」。データを保存し、読み書きのスピードが体感速度にも影響します。
  • 電源ユニットは「心臓」。すべてのパーツに安定した電力を供給します。

これらのパーツがバランスよく構成されてこそ、配信者にとってストレスのない環境が整います。

ゲーム配信者、雑談配信者、動画編集者で必要スペックは変わる

配信と一口に言っても、その内容によってパソコンに求められる性能は大きく異なります。

配信スタイル重視するべき性能理由
ゲーム配信者GPU(+CPU)高画質・高フレームレートでのゲーム配信には強力なグラボが必須。CPUも同時処理に耐えるパワーが必要です。
雑談配信者メモリ・CPU映像処理が少ないためGPUはそこまで重視されませんが、複数ウィンドウを開くなどに対応するためメモリの余裕は必要です。
動画編集者ストレージ・メモリ・CPU長時間素材の編集・書き出しには大量のメモリと高速なストレージ、強力なCPUが不可欠です。

自分の配信スタイルや、今後やってみたいことに応じて、PCのパーツ構成を見直してみることが大切です。
「高い=正解」ではなく、「合っている=快適」の視点で選びましょう。

CPUとは

CPU(Central Processing Unit)は、パソコンの「頭脳」にあたる重要なパーツです。すべての処理命令を統括・実行し、PC全体のスピード感や快適さを左右します。配信者にとっては「処理落ちしない」「カクつかない」ための要となる部分です。

配信では「処理性能」が重要

OBSなどの配信ソフトを使用する場合、CPUは映像のエンコード処理を担う場面が多くなります。

たとえば、以下のような場面でCPU性能が効いてきます。

  • ゲームをしながら配信(同時に多くの処理をする)
  • 複数のウィンドウや素材を重ねる配信画面
  • 高解像度(1080p以上)や高フレームレート(60fps)での出力

重いゲーム+高品質配信を目指すなら、上位グレードのCPU(Core i7 / Ryzen 7以上)を選ぶことが推奨されます。

IntelとAMD、どちらがいい?

CPUメーカーには主にIntelAMDの2社があります。2020年代前半以降、配信・編集用途ではAMDのRyzenシリーズが高い評価を受けていましたが、最近はIntelも巻き返しを図っています。

ただし、2024年後半から2025年にかけて、Intel第13世代~第14世代において「eコア(高効率コア)」がOBSや一部ゲームと相性問題を起こす不具合が複数報告されています。

例:Intel Core i9-13900K などで「録画停止」「配信フリーズ」が起こるケースあり
対処にはBIOS設定でeコア無効化などの手間がかかることも。

こうした事情から、現時点では配信者向けにはAMD(Ryzen 7 / 9シリーズ)が安定感でやや優勢と見る専門家も少なくありません。ただし、編集やAI系アプリではIntelの強みもあるため、使うソフトとの相性も加味すべきです。

コア数とクロック数の見方

CPUを選ぶ際に注目すべき主な指標が、コア数クロック数(GHz)です。

  • コア数(Core):同時に処理できる「作業員の数」。多いほどマルチタスクに強い。配信や録画・ゲームを並行するなら6コア以上、可能なら8コア以上が理想。
  • クロック数(GHz):1秒間に処理できるスピード。高いほど一つの作業が早く終わる。3.5GHz以上を目安に。

ただし、「数字が多ければ必ず良い」わけではなく、発熱や電力消費とのバランスも重要です。また、OBSなどが全コアを均等に使わないこともあるため、一部のコアの性能(シングルスレッド性能)も影響します。

メモリとは

メモリ(RAM:Random Access Memory)は、PCが一時的にデータを置いておく作業台のような役割を果たします。配信・録画・ゲーム・ブラウザなど、複数のアプリを同時に扱う配信者にとって、メモリ容量は快適な作業環境を維持するために欠かせません。

なぜ配信にメモリが必要なのか

配信では、以下のように大量のデータ処理を同時並行で行う場面が多くなります。

  • OBSや配信ソフトのリアルタイム映像処理
  • ゲーム本体の動作
  • 配信画面のレイアウト構築(画像・動画・音声)
  • ブラウザでのコメント確認やBGM操作
  • 動画録画の一時データ保存

これらのすべてがメモリ上で処理されており、容量が足りないと「一時的に作業スペースが埋まってしまう」状態になります。結果として、処理落ちや映像のカクつき、ソフトの強制終了といった不具合が起きやすくなります。

最低16GB、理想は32GB

現在の配信環境では、最低でも16GBのメモリを搭載することが推奨されます。とくにゲーム配信やマルチタスク環境では16GBでギリギリなこともあり、将来性や安定性を考えると32GB搭載が理想です。

用途推奨メモリ容量
雑談・2D配信(軽量構成)16GB
ゲーム配信(ミドルスペック)16〜32GB
ゲーム+録画+編集+ブラウザ同時32GB以上

なお、メモリはあとから増設可能なことが多いため、予算が限られている場合はまず16GBで組み、のちに増設する方法もあります。

メモリ不足で起きるトラブル例

メモリが不足すると、以下のような症状が頻発します。

  • OBSでの映像遅延やフレーム落ち
  • ゲームと同時配信時に配信ソフトが強制終了
  • 録画ファイルの破損や録画停止
  • ブラウザやコメントビューアが応答なしになる
  • PCの全体動作が「ワンテンポ遅れる」感じになる

さらに、メモリが足りない状態で無理に動作を続けると、Windowsの仮想メモリ(ストレージ)に処理が回るため、SSDやHDDへの負荷が高まり、寿命を縮める原因にもなります。

GPUとは

GPU(Graphics Processing Unit)は映像処理を専門に行うパーツで、PCにとっては「映像の演算処理担当」とも言えます。とくにゲーム配信や3Dコンテンツを扱う配信者にとって、GPUの性能は配信品質や視聴体験を大きく左右します。

ゲーム配信では超重要

ゲーム配信では、以下のようにGPUが多くの作業を担います。

  • ゲームの映像描画(グラフィックの表示・エフェクト処理)
  • OBSなどの配信ソフトでのハードウェアエンコード(NVENCなど)
  • 複数モニター環境の表示処理
  • ゲーム録画や編集時のプレビュー処理

もしGPUが非力であれば、映像がカクついたり、画質を下げざるを得ない事態に陥ります。つまり、GPUは「配信品質の土台を支えるキーパーツ」と言えるのです。

NVIDIAとAMDの違い

現在、GPUの主な選択肢はNVIDIA(GeForceシリーズ)とAMD(Radeonシリーズ)の2つです。それぞれ以下のような特徴があります。

項目NVIDIA(GeForce)AMD(Radeon)
エンコード性能NVENCが高評価、配信向け◎配信対応はしているがNVIDIAに劣る
ソフト対応OBSや編集ソフトとの相性が良い対応は進んでいるが細かい設定が必要なことも
ドライバ安定性高評価(ただし一部モデルで不具合あり)モデルによりムラあり
価格帯やや高めコスパ重視なら有力

特にNVIDIAのNVENCエンコード機能は、CPUに負荷をかけずに高品質な配信が可能なため、多くの配信者に支持されています。

なお、2024年以降のGeForce RTX 40シリーズでは、一部ドライバ不具合(ブラックアウト、音ズレ、GPU使用率暴走等)も報告されており、導入の際は最新ドライバと安定性のチェックを怠らないようにしましょう。

GPUなし(オンボード)ではどこまでできる?

GPUを搭載せず、CPU内蔵のオンボードグラフィックスでの配信も技術的には可能ですが、用途が限られます

配信内容オンボードでの可否
雑談・2D配信○ 可能
軽いブラウザゲーム△ カクつくことも
3Dゲーム配信✕ 不可(性能不足)
動画編集✕ 厳しい

たとえば、Intelの一部CPUに搭載されているIntel Iris Xeなど高性能な内蔵GPUでも、軽い用途限定です。ゲーム配信・高画質配信を目指すなら、必ず専用GPUを用意するべきです。

ストレージとは

ストレージはデータの保存場所を指します。PCにおける「引き出し」のようなもので、ゲームファイルや録画データ、配信素材、動画編集のプロジェクトデータなど、あらゆるファイルがここに保存されます。

配信素材や録画データの置き場所

配信者にとっては以下のような用途がストレージに直結します。

  • OBSの録画ファイル:高画質で録画する場合、数分でGB単位の容量を消費
  • 配信素材(画像、BGM、効果音など)
  • ゲーム本体のデータ(最近は1タイトルで100GB超も)
  • アーカイブ編集用の動画ファイル

つまり、配信をすればするほどストレージ消費は加速度的に増えるため、容量と速度の両方が重要です。

SSDとHDD、どちらを選ぶ?

ストレージには大きく分けてSSD(ソリッドステートドライブ)とHDD(ハードディスクドライブ)があります。

特徴SSDHDD
読み書き速度非常に速い(ゲームや録画向き)遅い(保存専用なら可)
静音性静かモーター音がする
耐久性衝撃に強い衝撃に弱く、故障しやすい
容量単価高い安価で大容量が手に入る

一般的なおすすめは「起動ドライブにSSD(最低500GB)、保存用にHDD(2TB以上)」の2段構えです。録画や編集作業の快適さを求めるなら、NVMe接続のSSDが特に有効です。

ストレージが足りないとどうなる?

ストレージ容量が逼迫してくると、以下のようなトラブルが発生します。

  • 録画中に保存できず配信が止まる
  • 編集中にプレビューが重くなる
  • Windows自体の動作が不安定に
  • アップデートやゲームインストールができない

また、ストレージ残量が数GBを切ると、キャッシュ処理なども正常に行われずパフォーマンスが極端に低下します。常に空き容量は20%以上を保っておくのが安全です。

電源とは

PCの電源ユニット(Power Supply Unit)は、すべてのパーツに安定した電力を供給する心臓部です。性能の高いCPUやGPUを搭載するほど、必要な電力は増えます。配信者にとっては「映像・音声処理中に安定して動作するか」に直結する重要パーツです。

安定性が命。ワット数と品質がポイント

配信者が選ぶべき電源には、次の2つの要素が重要です。

  • 必要な電力(W:ワット)をカバーしているか
  • 安定した電力を供給できる品質か(変換効率)

【目安ワット数(最低ライン)】

構成推奨電源容量
軽めの雑談・2D配信450〜550W
ゲーム配信・中スペックPC600〜750W
高画質配信+動画編集PC750W〜850W以上

単に起動するだけでなく、配信や録画でフル稼働しても電力が余るくらいの容量が安心です。

電源の変換効率にも注目(80 PLUS認証)

電源には「80 PLUS」という効率の指標があります。これはコンセントから引っ張ってきた電気を、どれくらい無駄なくPCに使えるかを示すものです。

ランク意味(簡略)
STANDARD最低限の変換効率(非推奨)
BRONZE80%以上(コスパ重視向け)
GOLD以上90%近い効率、安定性・寿命も良い

特に配信中はCPU・GPUが高負荷になるため、効率の悪い電源は発熱やノイズの原因にもなります。最低でもBRONZE以上、できればGOLD以上を推奨します。

電源が原因で起こるトラブルとは?

  • 急にPCが落ちる・再起動する
  • 録画中にフリーズ
  • 電源ONにしても立ち上がらない
  • ノイズや異音がする

これらはすべて「電力不足」「電源の質が悪い」ことが原因の可能性があります。意外と見落としがちですが、配信トラブルの原因のひとつが電源です。

まとめ

配信に必要なスペックは、配信内容(ゲーム・雑談・動画編集)によって異なります。しかし共通して言えるのは「安定したパフォーマンス」を発揮するためには、全体のバランスが重要ということです。

パーツチェックポイント
CPU処理性能(コア数・クロック数)とIntel/AMDの特徴を理解
メモリ最低16GB、理想は32GB。常駐アプリとの兼ね合いも重要
GPUゲーム配信では必須。NVIDIA優勢、オンボードは最小限
ストレージSSDを中心に。容量より「速さ」で選ぶ(NVMe推奨)
電源安定性重視。余裕あるワット数と変換効率(80 PLUS)必須

ひとこま依頼箱では以下のような相談についても対応可能です。

  • 配信スタイルや目的に応じたPCスペックの相談
  • 各パーツ構成に関する見積もりの作成支援
  • BTOパソコン購入時の注意点やチェックリストの整理

お困りの際はお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人
ぶいすと編集長

起業家歴6年
これまでVTuberのマネジメントや、BtoCサービス、CtoCサービスのオペレーション構築、年商100億円以上の大手企業やスタートアップへ業務コンサルティング、金融サービス向けのコンプライアンス体制構築などに携わってきました。
表には見えない課題や実務に触れてきたからこそ、ひとつでも「助かった」と思ってもらえる情報を整理して届けたいと思っています。

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